労働者派遣法の改正、3つのポイント
労働者派遣法の改正、3つのポイント
平成24年10月1日から労働者派遣法改正法が施行されます。
(→労働契約申込みみなし制度の施行日は、平成27年10月1日~)
派遣労働という働き方をする人たちの保護に重点を置いて改正され、その内容は大きく分けて3つあります。
1.労働者派遣事業の規制が強化されます
(1)日雇派遣の禁止(原則)
1日単位や30日以内の期間を定めて行われる派遣契約は、あまりにも期間が短すぎる
ため、派遣元や派遣先で適切な雇用管理責任が果たされていないからです。
※あくまで日雇い派遣の禁止です。会社が直接雇入れる日雇就労が禁止されるわけではありません。
<例外>
- ソフトウェア開発、秘書、ファイリングなどの日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼさない業務
- 60歳以上の者
- 昼間学生
- 副業者(生業収入が500万円以上)
- 家庭の主婦などで世帯収入額が500万円以上の者
(2)グループ企業内の派遣を8割までに規制
同一グループ内に派遣される場合、派遣元事業主が第二の人事部に位置付けられる
ことになるからです。
- 派遣割合は労働時間で計算されます
- 派遣元事業主に対して報告が義務化されます(事業年度終了後3ヶ月以内)
<グループ企業の範囲>
- 派遣元事業主が連結子会社の場合
→ 派遣元事業主の親会社
→ 〃 の子会社
※有価証券報告書などにより、連結決算の範囲で判断されます。
- 派遣元事業主が連結子会社でない場合
→ 派遣元事業主の親会社等
→ 〃 の子会社等
※議決権や出資金の過半数かどうか等により、判断されます。
(3)離職した労働者の離職後1年以内の派遣労働者受入れ禁止
本来直接雇用するべき者を派遣労働者として、労働条件を下げてしまう可能性が
あり、また常用代替の典型的な例で、労働者派遣法の趣旨に反するからです。
- 正社員、契約社員、パート、アルバイトを問わず全ての労働者について離職後1年以内にそれまで働いていた会社への派遣が禁止されます。
- 派遣先となる会社は、離職後1年以内の労働者を派遣労働者として受け入れることが禁止されます。書面等で派遣元へ通知します。
- 定年退職者は除外されますので、離職後1年経過していなくても派遣が可能です。60歳以上の継続雇用後に離職した者も可。
2.派遣労働者の無期雇用や待遇の改善
(1)正社員への転換推進措置を努力義務化
派遣元事業主との雇用期間が通算して1年以上の
・有期契約の派遣労働者
・派遣労働者として雇用する場合 は、労働者の希望を把握し
- 期間の定めのない雇用をする機会を提供
- 紹介予定派遣の対象として直接雇用を推進
- 期間の定めのない雇用へ転換推進するために教育訓練 などを実施します。
(2)同種業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮した待遇の確保
<派遣元事業主>
- 以下を勘案して派遣労働者の賃金を決定するように努めること
- 同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準
- 〃 一般の労働者の賃金水準
- 派遣労働者の職務内容や成果など
- 教育訓練・福利厚生等についても派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮するように努めること
<派遣先>
- 派遣元事業主の求めに応じて以下に努めること
- 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準、教育訓練等に関する情報を提供
- 派遣労働者の職務の評価等に協力する
(3)派遣料金と派遣労働者の賃金割合(マージン率)など情報公開を義務化
- 情報提供すべき事項
- 派遣労働者の数
- 派遣先の数
- マージン率
- 教育訓練に関する事項(派遣元事業主で実施している内容・実施期間・費用の負担について)
- 労働者派遣に関する料金額の平均額
- 派遣労働者の賃金額の平均額
- 福利厚生等その他参考となると認められる事項
(4)雇入れの際に派遣労働者に対し、一人あたりの派遣料金の額を明示
- 明示すべき派遣料金額は、次のいずれか
- 派遣労働者本人の派遣料金額
- 派遣労働者が所属する事業所における派遣料金額の平均
- 口頭による明示は不可。書面、ファックス、メールにより実施。
- 労働契約締結時、実際の派遣時、明示した派遣料金額を変更する時
(5)労働者派遣契約の解除の際の、派遣元・派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当の支払いに要する費用負担等の措置を義務化
3.違法派遣に対する迅速で的確な対処
- 違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合は、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだとみなす
- 処分逃れを防止するための労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備
ちなみに、労働者派遣法の正式名をご存知ですか?
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」
という長い名前です。実は今回の改正でこの法律名も変わりました。
派遣労働者の就業条件の整備だけでなく、保護するための法律に目的が変わったのです。
改正を経てもまだまだ派遣業に関する検討事項は堆積しています。
単純な一般事務業務の仕事が減ってきているなか、企業側はいかに育成を行うか、派遣労働者側はどう自分のキャリアを考えるか。
それぞれが次のステップに進めるようになることが望ましいですね。